ロシアのウクライナ侵攻により閉ざされてしまった、日ロ間の関係、平和条約締結のための交渉、その支えでもあった北方四島事業や共同経済活動は、今のところ再開の目途は全く見えませんが、今できることを、今だからやらなければならないことを、未来を信じて、粘り強く取り組んでいかなければなりません。それが返還運動原点の地の役割だと思っております。
(1)北方墓参事業の再開について
【質問】
はじめに、北方墓参についてでありますが、この事業については、ロシア側も人道的な措置として制裁対象項目とはしておらず、我が国が自ら中止した事業です。
経済面でもすべてが閉ざされている訳ではありませんので、高齢化が進む元島民の強い願いでもある「北方墓参事業」については、人道的な立場から再開に向けた強力な要請活動が必要と考えますが、市長の見解を伺います。
【市長答弁】
特別な枠組みとして実施されてきた北方四島交流等事業は、一昨年から新型コロナウイルスの 影響により、中止を余儀なくされ、今年度においては、ウクライナ情勢に伴い、北方四島交流事業と自由訪問についての合意がロシア側より一方的に破棄され、さらに北方墓参の実施も見送られたことで、高齢化が著しい元島民をはじめ関係者は非常に落胆しています。 先般、岡田内閣府特命担当大臣が来根された際にも、北隣協として、北方墓参をはじめ北方四島交流等事業が早期に再開されるよう要望したところであり、今後も、高齢化が著しい元島民の思いに寄り添った事業の取り組みとして、あらゆる機会を捉え、北方墓参の早期再開を国に対し強く要請してまいります。
【再質問】
元島民の思いに寄り添い、あらゆる機会を捉え、北方墓参の早期再開を国に対して強く要請されるとのご答弁、我々議会も共に取り組んでいかなければならないテーマであると考えております。
日本側が取りやめた事業でもあり、その理由であったり、どの様な状況となった場合、ロシア側との再開に向けた協議がおこなわれるのか、なによりも次年度の可能性、再開されるための条件なども含め、要請活動の中で、確認していかなければならないもの考えます。見解があれば伺いた。
【答弁】
北方墓参事業の再開に向けた国への要望についてでありますが、先般、岡田内閣府特命担当大臣が来根された際にも、北方墓参の早期再開について要望した。岡田大臣からは、「皆さんのお気持ちを思うと実現の道がないものか考えてきたが、ウクライナ侵攻の状況が改善され、戦争が止まらない限り再開は極めて難しい」との発言がありました。また、「ビザなし渡航を再開させることは最優先の課題」とも述べられていたことから、引き続き、あらゆる機会を捉えて、北方領土墓参の再開等を強く要請するとともに、現地として再開に向けた準備など、関係機関と連携してしっかりと対応したい。
洋上墓参の一行を乗せ出航する北方四島交流専用船「えとぴりか」
(2)北方領土問題啓発事業の強化と原点の地の役割について
【質問】
コロナ禍、そして、ロシアのウクライナ侵攻により北方四島との直接的な交流の機会がなくなってしまいましたが、その一方で、Youtubeでの啓発動画の配信、Zoom等のオンライン会議機能を活用した語り部事業など新たな啓発活動もはじまっています。
返還運動原点の地として、SNS、ICTを活用した新たな情報発信への取り組み、領土問題を広く全国に伝えるための新たな事業の企画等々知恵を出し合い、取り組むべき時と考えますが、市長のお考えを伺います。
【市長答弁】
ロシアによるウクライナ侵攻により、平和条約交渉の中断、さらには北方四島との交流の機会が失われるなど、日ロ関係は大変厳しい状況にある中、コロナの感染状況の落ち着きとともに、啓発イベントや全国の県民会議等の現地視察団の訪問など、徐々にではありますが、従来の啓発事業等が再開されてきています。 北方領土問題の解決に向けては、元島民をはじめ、関係団体等とも緊密に連携し、さらなる啓発活動の活性化が必要と考えており、現下の厳しい状況なども踏まえ、本年12月には3年ぶりとなる、東京都でのアピール行進の実施を決定しました。
また、現在、若い世代の北方領土問題への関心と返還要求運動への理解に繋げるため動画制作と配信準備を進めているところであります。 今後も、北方領土返還要求運動原点の地として、返還要求運動の火を絶やすことなく、国民世論のさらなる喚起高揚のため、全国の先頭に立って発信し続けるとともに、特に若い世代の北方領土問題への認知度を高めるため、SNSなどを活用した、効果的な啓発事業などに積極的に取り組みます。
【再質問】
若い世代の北方領土問題への認知度を高めるためのSNSなどの効果的な活用についてですが、ハッシュタグの使いかたなどを意識的に共通のものを使う、或いは、原点の地からの情報発信のポータルサイトの構築を検討する。その中で、動画制作などについても、啓発ポスターの様なコンテストスタイルで作成、紹介する等若い世代に、知ってもらう、考えてもらう、そして、自ら参加する、そんな仕掛けづくりを、原点の地目線で発信していくことも大切だと思います。より多くの市民が共に取り組む仕組みづくりを考えていただきたいと思いますが、見解があれば伺いた。
【答弁】
北方領土問題の啓発推進については、これまでも、国や北海道、北対協などの関係団体と連携し、啓発事業の推進に努めてきた。
来年度に向け、内閣府北方対策本部は、「若者によるこれからの時代に適した啓発手法の開発及び展開」を重点課題に掲げ、「北方領土啓発次世代ラボ」事業などを概算要求しているところであり、引き続き、市民はもとより、若い世代など多くの国民が運動に参加できる仕組みづくりなどについて、国をはじめ関係機関と連携して取り組みたい。
(3)返還運動後継育成対策について
【質問】
元島民の高齢化が進むなかで、返還運動の担いてを育てる取り組みが重要なテーマと考えます。元島民二世、三世に加え多くの市民が返還運動に参加できるような、市民ネットワークであったり、強い想いを持って返還運動・活動を続ける市民を支える市独自の仕組みづくりを考え、その構築に取り組むべきと考えます。
石垣市長がお考えの、ボーダーならではのまちづくりに、返還運動をどの様に結び付け、原点の地としての役割を担う人材を育成すべきか、見解を伺います。
【市長答弁】
北方領土問題の長期化に伴い、元島民の高齢化が著しい現状においては、その後継者である二世の果たす役割は大きいものがあり、さらに今後は返還要求運動の灯を三世、四世へと引き継いでいくことが求められます。 また、返還要求運動は、根室市民はもとより、国民運動として、国民全体で行うことが最も重要であり、全国の返還運動団体を含め、その後継者の育成が急務となっています。
現在、根室市はもとより北隣協、北海道、北対協などにおいて、SNS等を活用した、若い世代への領土問題の啓発を推進するなど、後継者の育成に努めています。
当市も「北方領土返還要求推進協議会」を中心に各関係団体がネットワーク化されており、多くの市民に返還要求運動に参加いただいておりますが、各事業等の実施にあたっては、若い世代が参加しやすい環境整備も重要と考えます。 現在は、ウクライナ情勢により、北方四島との交流が中断している状況ですが、ボーダーのまちとして、交流の再開を見据えた取組みのほか、北方四島に関する歴史的文化遺産である、陸揚庫の保存・継承・活用等を通じた後継者育成などを進めるとともに、原点の地として、当市を訪れる県民会議や修学旅行生などに北方領土問題をわかりやすく伝えることのできる、人材の育成に取り組みたいと考えています。
【再質問その1】
返還運動原点のちとして県民会議や修学旅行生などに北方領土問題を分かりやすくつたえることのできる人材育成に取り組むとのことですが、現状どの様な手法を想定されていますか、また、人材育成の課題をどの様に捉えているのか、お聞したい。
【答弁】
現在、根室市を訪れる県民会議や修学旅行などの多くは、納沙布岬から島影を眺め、北方領土関連施設を視察するとともに、元島民や2世のほか根室高校にある「北方領土研究会」との懇談を希望される団体が増えています。
特に、近年は「北方領土研究会」への講演や懇談の依頼が増えており、全国各地でのイベントへの派遣やリモート参加など、原点の地としての活動内容のほか自身が感じていることを伝えることが、北方領土問題の啓発として全国の皆様に届いているものと感じています。
「北方領土研究会」の会員の多くは、元島民3世や4世であったり中学生時代に弁論大会などの啓発事業に参加された方が多いことから、今後も、若い世代が参加しやすい啓発事業の実施に努めるとともに、「北方領土研究会」などの活動を支えていきたい。
【再質問その2】
北方四島交流専用船「えとぴりか」を、少なくとも、これまでの四島交流事業期間、根室港に係留、県民会議や修学旅行生などの研修、管内の中高生の学びの場等、還運動への活用を強く求めてはと考えますが、市長のお考えを伺いたい。 【答弁】
当市を訪れる「青少年現地視察」や「修学旅行」、また、啓発イベントなどに「えとぴりか」を活用することは、北方領土問題の啓発において効果的であることから、今年度、「洋上慰霊」終了後に、北隣協として、根室管内の小学生などを対象とした「夏休み、青少年北方領土クルージング」を、後継者育成事業の位置づけのもと実施する予定であったが、募集・周知の直前になって、再びコロナが急拡大したことから、中止しとなった。
「えとぴりか」の啓発事業への活用推進については、先般、岡田大臣が来根された際にも、北隣協として要望しており、引き続き国等に対し要望するとともに、啓発事業への活用に向け、北対協などの関係機関とも協議してまいりたい。
Comentários